各診療科のご紹介
心臓血管外科
科の概要・特色
1.診療理念と体制
2005年度から年初に理念を発表し、具体的目標を決めて診療にあたっています。2010年度の理念は4S(Save patients, Patient's satisfaction, Safety, Step up)としました。
正規医師7名、専攻医(後期研修医)6名の13名で診療にあたっています。正規医師は30〜50歳台の働き盛りの医師たちで、各自が執刀医として各種疾患に対応できる能力を持っています。夜間、休日体制は、循環器内科と交代で宿日直を行い、循環器内科が当直時には心臓血管外科医1名がオンコールとなっており、緊急手術が必要な場合には3名の日本心臓血管外科専門医が交代で指導にあたる体制をとっています。
2.症例
人工心肺を用いた心大血管手術(開心術)は、2000年331例、2001年352例、2002年350例、2003年357例、2004年341例、2005年351例、2006年386例、2007年312例、2008年342例、2009年327例で 最近10年間は常に年間300例以上の開心術を行っており、全国ランキングのベスト15にはいる症例数をこなしています(主要診療実績の項参照)。開心術症例の内訳は、狭心症等の虚血性心疾患、弁膜症、解離性大動脈瘤を含めた胸部大動脈瘤、先天性心疾患などで、人工心肺を用いない心臓血管手術の主なものとしては、心拍動下冠動脈バイパス術、胸部および腹部大動脈瘤に対するステント治療、腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、下肢静脈瘤などに対する手術を行っています。
3.術式の工夫
過去20年間に治療方法や術式の工夫改良などを種々行い報告してきました。
a.心筋保護法としての逆行性血液持続冠潅流法
重篤な症例にも完全な手術を行うため、長時間の心停止が安全にできるように逆行性血液持続冠潅流法の開発を行いました。本法は冠静脈洞にバルーンカテーテルを留置し、持続的に血液を潅流する心筋保護法で、血液は冠静脈,から冠動脈へと通常とは逆に流れる方法で、冠動脈の狭窄が強い症例でも確実な心筋保護が得られる利点があります。1983年よりバルーンカテーテルや潅流方法の改良を重ね2009年度末までに約6000例に実施してきました。3〜4時間の心停止では術後の心機能にまったく障害を生じない心筋保護として、現在もほとんどの症例に対して用いています。
b.血管鉗子を使用しないで行う脳分離潅流法(non-clamping selective cerebral perfusion )
全弓部大動脈人工血管置換術に際し、鉗子によって血管内にあるもろもろの破片(debris)を飛ばし、脳梗塞をはじめとする重要臓器の塞栓症をおこす危険性があります。これを予防する目的で、大動脈及び弓部分枝に血管鉗子をまったく使用しない方法を開発しました。1990年から使用し、弓部大動脈瘤に対する全弓部大動脈人工血管置換術の成績が安定したものとなっています。
c.超音波メスによる内胸動脈(skeletonized ITA)の採取と動脈グラフトのみによる冠動脈バイパス術
超音波メス(harmonic scalpel)による内胸動脈(skeltonized ITA)採取を1998年に臨床応用しました。この方法は全国の主流となっています。
d.人工心肺を用いない心拍動下冠動脈バイパス手術(off-pump CABG)
高齢者の手術が増加するに従い、大動脈に病変を持った冠動脈疾患が増加してきました。こうした症例に人工心肺を用いた手術を行うと脳梗塞等の合併症を併発することがあります。そこで人工心肺を用いない心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump CABG)を1999年に導入し、現在は冠動脈バイパスの約50%に使用し良好な結果を得ている。
e.不整脈に対する外科治療
弁膜症の患者さんはしばしば心房細動という不整脈を伴っていますが、こうした患者さんの術後の生活の質を高めるため、弁形成術や人工弁置換術と同時に不整脈に対する手術(メイズ手術)を積極的に行っています。最近では、高周波による焼灼法を応用して手術侵襲を軽減することによって良好な成績が得られています。
f.胸部ならびに腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術の応用
動脈瘤に対する治療法としては、外科治療すなわち人工血管置換術が一般的に行われています。しかし、社会の高齢化と食生活の欧米化と相俟って、最近高齢者や全身の合併症を有する通常の手術が困難な症例が増加してきています。このような症例に対して経カテーテル的に人工血管を動脈瘤の部位に留置する侵襲の少ないステントグラフト内挿術が世界的に普及してきました。当センターにおいても院内の倫理委員会の承認を得た後に、2003年4月より、胸部ならびに腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術の臨床応用を開始し、手術のリスクが高い高齢者(最高齢90歳)などを中心に行っています。この治療法は、胸部や腹部に傷がはいらず股の付け根の小切開創から経カテーテル的に治療するので術後の侵襲が少なく術後1週間での退院が可能であり日常生活への復帰も早い低侵襲治療です。
4.教育と研究
心臓血管外科部長は神戸大学医学部臨床教授を兼務している。日本胸部外科学会指導医に2名が認定を受けており、正規医師の全員が日本心臓血管外科専門医ならびに日本胸部外科学会認定医である。
研修医、他施設よりの研修、見学医、大学医学部の実習学生の教育には正規医師が分担を決めて行っている。
また臨床工学技士や救急救命士に対する教育も行っている。毎週1〜2回行われる教育的勉強会の内容は、パワーポイントにファイル化されてホストコンピューターに保存され、情報を共有している。
認定施設
胸部外科学会認定施設
心血管インターベンション学会研修施設